大切なことに向き合いたいのに、ネガティブな雑念が邪魔して集中できない。今回はそんな方におすすめしたい、雑念に振り回される状態から脱却し、心を「今・ここ」に向けるための方法論「マインドフルネス」についてご紹介します。効果や実践のポイント、子育てや仕事で多忙な人でも取り入れやすいトレーニング方法をわかりやすくまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
誰でも一度は、仕事や育児に追われるなかで過去への執着、未来に対する不安で頭がいっぱいになってしまった経験があるのではないでしょうか。マインドフルネスとは、こうした雑念に占領された心を「今・ここ」につなぎ直すための知恵と方法です。具体的には、からだの感覚や感情に注意を向け、あるがままの状態を知覚して受け入れるトレーニングや、心のあり方を指します。
もともとは仏教など、東洋の思想で実践されてきた方法ですが、1970年代にマサチューセッツ大学の研究者が「マインドフルネスストレス逓減法」として医療現場に導入。今では宗教の垣根を超えて、心理療法やセルフケアのトレーニング方法として広まっています。
マインドフルネスを実践すると、心を占めていた恐れや不安と距離をとることが上手になり、何事にも動じにくい心を手に入れられるでしょう。また、本来の心の声がクリアになることによって、自分が本当に満たされたいことに向かって行動できるようになります。
イメージがつかないという方はぜひ一度、自身の生活にあてはめながら考えてみてください。子育て中の方であれば、巷にあふれる子育て情報に流されず、あるがままの子どもを受け入れ、成長を見守ることができるようになるでしょう。大人にだって感情の波はあって当たり前ですが、マインドフルネスを実践すると、目の前の子どものことと大人の事情を混同することはなくなります。
また、パートナーがいる方は、相手の存在そのものに感謝の気持ちを向けられるかもしれません。仕事やビジネスの場面でいえば、他人の評価や過去の失敗にとらわれにくくなるので、仕事の効率や集中力のアップが期待できます。このように、マインドフルネスによって得られる心のしなやかさは、暮らしのあらゆる場面で効果を発揮するのです。
マインドフルネスの実践中は、今のからだの感覚や気持ちに注意を向けてください。雑念と距離を置いて感覚に集中することで、からだや身の回りに関する新たな気付きに目を向けやすくなります。
しかし、仕事や子育てで忙しい方にとっては、まとまった時間をつくること自体が難しいかもしれません。そこで、今回はいつでも、どんな場所でも実践しやすい方法を厳選してご紹介します。1日5分などの短い時間でもいいので、期間を決めて継続しましょう。
耳は常にさまざまな音の刺激をシャワーのように浴びています。しかし、耳が全ての刺激をとらえていても、脳がそのほとんどをブロックしコントロールしています。そのため無数の音の中から赤ちゃんの泣き声、会議の話し手の声、自分がとるべき電話の音など、自分にとって大切な音に集中できるのです。
1日に何度か、自分を取り巻く無数の音に耳を澄ませてみましょう。この実践はマインドフルネスの導入として、からだの感覚に意識的に注意を切りかえる練習におすすめです。また、この実践は、心を鎮めるのにも効果的。仕事や育児の最中に心がざわざわしてきたら、ちょっと手を休めて周りの音に耳を澄ませてみませんか。
【手順】
【実践のコツ】
目を閉じて座れる場所で行いましょう。目を閉じて視覚的な刺激を遮断することで、耳からの刺激に集中しやすくなります。屋外・屋内どちらでもかまいません。オフィスの椅子に座ったままでもできます。
やらなければいけないことが気になりはじめても、検討や判断は後回し。どの音も赤ちゃんが初めて耳にする音のように、心を研ぎ澄ませて聴きましょう。
雑念で頭がいっぱいになってしまうと気持ちの余裕もなくなり、行動までもがせかせかしがちです。気持ちも行動にも余裕を持ちたいけれど、何から手をつけていいかわからないという人もきっと多いはず。そんな時は、「やさしいタッチ」の実践から始めてみませんか。
手や指先は、絶え間なく動いて何かに触れ、つかんだり、撫でたりしていますが、気持ちの余裕がある時とない時では、触れ方も異なります。「やさしいタッチ」の実践中は、どんな物でも、赤ちゃんや繊細で壊れそうな物に触れる時のように、やさしくタッチしましょう。
子どもやパートナーに実践するのは照れくさいと感じる方もいるかもしれませんが、やってみることで自分自身の感覚や感情にどんな変化があるのか、ぜひ試してみてください。人間関係に悩んでいる人にこそ取り組んでみてほしいトレーニングです。
【手順】
【実践のタイミングとコツ】
日常のこんな傾向のときに「やさしいタッチ」を実践してみてはいかがでしょうか。
・子どもの入浴や着替えを手伝うとき、ついつい苛立って手荒になってしまう
・食事を出すときにガチャンと音がよくする
・ドアを閉めるとき大きな音を立ててしまう
1つ実践してみると、他にもたくさん実践の機会が目に入ってくるようになるでしょう。
【応用編】
日常の中で、こんなことに気づいたら、「やさしいタッチ」の応用編として「やさしいまなざしを向ける」を実践してみるのもおすすめです。
・ふと鏡に映った自分の顔がけわしいと感じる
・気がつくといつも頭の中が考え事でいっぱいで、眉間にしわが寄りがち
・最近、パートナーや子ども、同僚の笑顔を見ていない
雑念を無理に抑え込もうとしてもかえって暴走してしまいがちです。深呼吸を取り入れることにより、リセットの時間を習慣化しやすくなります。深呼吸中に雑念がわいても無理に押し殺さず、不安や恐れが強い自分を受け止めてから、再び呼吸に意識を戻しましょう。
【手順】
【実践のコツ】
1日のうち、できるだけたくさん、3回深呼吸をする機会を作りましょう。仕事が一段落したときや決めた時間に行うのでもよいですが、習慣化されるまでは不定期にアラームが鳴るよう設定して実践するとよいでしょう。
自分が発した言葉に対して「いや」、「でもね」と返されると、言葉だけでなく自分まで否定されたようで悲しくなったりするものです。パートナーや子どもとの関係の中で、あるいは職場で、そのような気持ちを抱えていませんか。
また、コミュニケ―ションの場面では否定されたと感じた側は、自分も負けじと否定の言葉で応戦してしまうため、エネルギーの消耗戦になりがちです。誰に対しても、どんな出来事に対しても、緊急の問題や危険がない限り「否定しない」を実践してみましょう。
多くの方は「そんなの無理に決まっている」と言いますが、あえて続けてみると子育て、パートナーとの関係、仕事など、すべての場面においてさまざまな気づきと思わぬ効果をもたらしてくれます。しかし、子どもがケガをしそうなことなど、必要な場面では理由とともにはっきりと「ダメ」と伝えましょう。
【手順】
【トレーニングの成果事例】
ある方は「いつも子育てのことでパートナーとけんかしていたけれど、この実践を通して、子育てに正解はなく、どちらの言い分も正しいということに気づいた」と言います。それまでは「自分が正しいことを認めさせねば」という気持ちで相手の言葉を遮ってきたけれど、否定をやめることで最後まで聴くことができるようになりました。そしてやり方はそれぞれ違っても、2人とも子どもを心から大切に思っていることに改めて気づいて感謝できたり、相手のやり方もいいなと思えるようになったりしたそうです。
ついつい「相手が姿勢を変えてくれたらこっちも変えてあげる」と思ってしまいがちですが、マインドフルネス実践中は気前よく自分から姿勢を変えていくのがコツ。一番得するのは勇気を出して自ら「否定しない」を実践した人。きっと豊かな気づきや達成感が得られますよ。
今回紹介したトレーニングは時間・場所を選ばす取り組めるものばかり。1日数分だけでも脳に思考をやめて休息してもらい、ストレスをためないようにしましょう。
雑念は抑え込もうとすると余計に頭から離れなくなるもの。そのため実践のコツは、雑念ではなく、からだの感覚や今わいてきた感情に意識を向けること。継続して取り組むことで、脳が休まる時間も増え、今この瞬間を生きられるようになりますよ。しかし、日々の家事や仕事で忙しく、ゆっくりする時間がないという方もいるでしょう。そんな方は家事の一部をアウトソーシングしてみてはいかがでしょうか。
パソナが運営するクラシニティは、きめ細やかな家事代行サービスを提供することで、お客様が仕事や子育てなど大切な時間に専念できる環境づくりをサポートします。初回お試しサービスも用意していますので、質の高いサービスを体験してみませんか。
教育分野から長年SDGsに関するプログラムの開発や指導に携わる。その一環として、小学生から成人まで、幅広い層を対象とした怒りや対立の転換法の指導にも携わり、自らのライフワークとしても実践中。またトレーナーとしての経験を活かして、コミュニケ―ションスキルやウェルビーイングに関する記事を多数執筆中。