クラシニティは、「働く女性を応援したい」という理念を持つパソナグループが女性活躍推進事業の一環として立ち上げた家事代行サービス。共働き世帯の家事負担を減らすことで女性の社会進出を支援する一方、ハウスキーパーとしてサービスに従事するフィリピン人女性のキャリア支援にも役立っています。こうした家事代行サービスを通じた社会貢献に対する取り組みについて、事業の立ち上げ当初からクラシニティに携わる澤藤真紀子さんに、お話を伺いました。
クラシニティの立ち上げ時から事業に携わる。子育てと介護のダブルケアの経験があり、その実体験から、女性のキャリアアップにおいて家事代行サービスが重要な役割を果たすことを社会に提言したいと考えている。
まず、クラシニティ立ち上げの経緯からお話しさせていただきます。
ご存知のように現在政府では女性活躍推進に向けて女性の家事負担を減らす家事代行サービスの普及に力を入れおり、その一環として2015年の改正国家戦略特区法による「家事支援外国人受入事業」を始めました。クラシニティは、これに基づいて設定された国家戦略特区における家事代行サービスになります。
ハウスキーパーとしてサービスに従事するのはフィリピン人女性なのですが、これについてパソナは人材育成のノウハウがありますので、それを生かす形で、フィリピンからハウスキーパーを受け入れる体制を日本とフィリピンの両国政府、そしてフィリピンの送り出し機関と連携を取りながら作り上げてきました。
家事代行サービスというと、今までは一部の富裕層のためのものというイメージがありましたが、それを一般家庭で誰しもが利用できるものにしたいということがクラシニティの目的であり願いでもあります。私のような働く主婦であっても気軽に利用できるものとしてお使いいただくことで、女性の活躍推進に貢献できると考えています。
家事代行サービスに従事しているのは、ハウスキーピングのスキルが高いことが国際的にも有名なフィリピンの女性なのですが、フィリピン政府は他国に家政婦として派遣している女性たちが虐待の被害に合うことを問題として抱えていました。
また、香港などでは違法契約により居宅環境や賃金の面でトラブルが多いという問題があり、フィリピン政府としてはより良い派遣先を探していたところでもあったんです。
そうした中で日本政府からの働きもあり、女性活躍支援という理念を掲げている当社が参画させていただいた経緯があります。
女性活躍推進ということにスポットを当てみると、海外の先進国においては女性が働くことは当たり前のことですので、多くの国でハウスキーピングが利用されています。
アジアですと、シンガポール、香港、台湾で広く浸透しており、ハウスキーピングとナニー(住み込みのベビーシッター)を併用しながら働く女性が非常に多いですね。
また、台湾や香港ではケアギバーと呼ばれる在宅で高齢者のお世話をする介護ハウスキーパーを併用するケースも一般的です。こうしたアウトソーシングサービスの多くを、フィリピンをはじめとする外国人労働者が担っており、利用することが当たり前のものとなっています。
当社ではフィリピン人女性たちを、一定期間働いていただくだけの単純な労働力だとは考えていません。彼女たちはプロフェッショナルなハウスキーパーであり、クラシニティで働いた後のキャリアも応援したいと考えています。
クラシニティで働く最大5年間で、さまざまなスキルを身につけることでキャリアの選択肢を広げることができますので、そうした環境のなかでキャリアビジョンを持ち、向上心高く取り組んでもらいたい。そんな思いで一緒に働いています。
当社の研修では、ハウスキーピングのスキルだけでなく、コミュニケーション能力などのソフトスキルの部分も非常に力を入れて行っていますが、そこで彼女たちが掴んだものを母国に持ち帰って役立てたり、あるいは他国に渡ってハウスキーピングスキルに磨きをかけたりしていただきたいと考えています。
帰国後のキャリア支援については、送り出し機関であるマグサイサイグループと協力して行っていますので、彼女たちがクラシニティで働いた期間に学んだことを自身のキャリアで生かす環境は整っています。さらにそれによって、フィリピン経済に貢献することもできるわけです。彼女たちには、そのロールモデルになって欲しいと願っています。
外国人労働者というと、まだまだ差別的な意味合いで語られることがあり、利用することが心配だという声を聞くこともあります。
当社にはハウスキーパーとして働くフィリピン人女性のサポーターでありたいという思いがあり、彼女たちの評価向上の手助けができればと思っています。そのためには徹底的な教育が必要だと思っています。
昨今は技能実習生が社会問題となっていますが、「日本に働きにきて欲しいのであれば、最初から就労ビザを用意すべきである」という考えを持っております。
それと同時に外国人労働者が日本で生活をする上で必要な日本語や日本文化・風習、日本企業で働く上での常識などの研修を受入機関や企業が積極的に行うことが必要です。彼女たちの考え方、文化・風習、宗教観などを受入側も深く理解し、外国人労働者が働きながらしっかり教育を受けられる環境を整えることが出来れば、ここまでのプロフェッショナルが育つという手本を示してきたい。それが、社会的な意義だと考えています。